この本は、ある一人の読書家(書評家)の「読書と子育ては両立するのか」という人生をかけた壮大な実験を描いた作品であります。
本の雑誌の発行人である著者の北上三郎氏は、子どもが嫌いなわけではないのですが、あるとき、仕事のために、つまり本を読むために、家に帰らなくなります。
彼のような本を生業にする人間にとって、子育てはいわば、読書の敵。本を読むには一人の時間が必要です。読書の時間と子どもとの時間を、同じ天秤にかけてどちらかを選択するなど到底できませんが、彼は、本をとりました。
彼の書評家としての読書量を支えたものは、愛する子どもとの時間を排除することから得ていたとは…。これこそ、まさに読書家の達人の領域なのかもしれません。
だから彼のおすすめする本には説得力がある。読書に人生をかけた一人の男の生きざまに、感動する1冊です。
中山 英(萬松堂本店店長兼出版社島屋六平出版営業課長。1児の父。毎晩、絵本を読み聞かせるのが日課。)