大人の本棚・こどもの本棚

わるいことがしたい

SNSでシェア

男の子は好奇心いっぱいで、「わるいことがしたい!」と言い、トイレットペーパーを転がしてほどいてぬいぐるみやタンスに巻き付けます。お母さんが「おもしろかった?」と聞いても男の子は返事をせず、「もっとわるいことがしたい!」と言って、おもちゃを壊したり、スパゲティーを食べ散らかしたり、シャワーを出しっぱなしで裸でびしょぬれのまま部屋に戻ってきたりします。

ようやくパンツだけ履いたところで、お母さんが「こんどは、もとにもどしてみようか。」と言います。すると男の子は、トイレットペーパーを巻き戻し、壊れたおもちゃをのりやセロテープで貼り合わせておもちゃ箱にしまったり、スパゲッティーを食べたお皿を洗ったり、水でびしょびしょにした部屋の拭き掃除をしたりします。お母さんが「おもしろかった?」と聞くと、男の子は初めて「おもしろかった!」と答え、そして最後に「もっと、もっと、もっと、もっとわるいことがしたい!」と言うのです。

『深夜特急』などの紀行小説が有名なノンフィクション作家沢木耕太郎氏が書いた絵本ということに興味を持ちました。ミスミヨシコ氏の絵は、いろいろな素材が貼り付けてあるのが楽しいです。男の子はのびのびと気持ちが済むまでやりたいことをやっています。お母さんにも余裕があって、すぐに叱ったりせず、優しく見守っています。こんなふうに子育てができたら素敵だなと思いました。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)

SNSでシェア

新着記事