「これから、あたしだけしか知らないひみつを お話ししましょう。あたしには、ふたごのいもうとがいるのです。」と始まるこの絵本は、幼い子の心の奥に広がる物語です。
主人公“あたし”のお母さんは春に生まれた弟が一番好きですが、妹のイルヴァ・リーはあたしのことが大好きです。妹は、バラの茂みの深い穴にある、金色の広間の女王です。あたしたちはそこで、秘密の言葉で話し、プードルと遊びます。〈キンノアシ〉〈ギンノアシ〉という馬に乗って〈ブキミガモリ〉をかけぬけ、原っぱでお菓子を食べます。けれども突然、妹があることを打ち明けたのです。
「この本よかった。」と話してくれた子どもが、何人かいました。下の子が生まれたときの孤独感が目に見えるようにかかれていて、自分のことのように心に響いたのでしょう。
臨床心理学者の河合隼雄氏は、「ひとりひとりの子どものなかに宇宙がある」と記していますが、リンドグレーンはその宇宙を見事に表現できる作家だと思います。愛らしく美しい絵も、この世界を十二分に描いています。
田村 梓(新潟市立小学校の学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、29年目になりました。公共図書館などでも、子どもと本をつなぐ活動をしています。)