大人の本棚・こどもの本棚

雨にシュクラン

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シュクラン。アラビア語で「ありがとう」という意味です。

この物語の主人公は16歳の真歩。憧れの書道部のために必死の思いで合格した高校を、家庭の事情で、わずか三か月で辞めることとなってしまいました。

そこで、真歩は転校ではなく、高卒認定を受けて書道学科のある大学を目指す道を選びます。「芯のある人になりたい」と願う彼女らしい選択ですが、その日々には「高校生ではない16歳」という立場の難しさがつきものでした。

自分で選んだはずなのに、引け目を感じてしまう。その中で真歩は、図書館の宅配ボランティアに出かけた先で、アラビア書道に出会います。流れるような、弾むような、美しい文字に惹かれた彼女は、アラビア書道をきっかけに出会った人々と交流し、世界を、考え方を広げていきます。

変化の大きな現代では、「こういう自分になりたい」と努力を重ねても、思わぬ理由でつまずいてしまうことが珍しくありません。それは子供だけでなく、メンタルを崩して会社を辞めることになった真歩のお父さんのような、大人も同じです。

その中で、「自分の人生を選び取りたい」ともがき、出会いを通じて選択肢を広げていく真歩の姿が、さわやかに胸に届きます。読みやすい文章と振り仮名つきで、小学校高学年から大人まで、幅広い世代が楽しめる本です。

「自分の芯があること」と「変化に柔軟になること」のバランスをどうとっていくか。受験などの岐路に立つ方には、特に読んでいただきたい一冊です。

遠藤 真衣(新潟県立図書館司書。ユースコーナー担当)

新潟県立図書館のホームページにBSNキッズプロジェクトの「大人の本棚・こどもの本棚」で紹介された本のリストが紹介されています。こちらもどうぞご利用ください。

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