最初本書のタイトルを見た時、私は単純に、インスタグラムなどのSNSに皆がレストランの食事の写真などを上げるようになって食べ物に見た目が重視されるようになった話だろうと思ったのです。しかし、読んでみると本書は、そういう最近のことだけでなく、私達の食に関する経済社会はそもそも歴史的・本質的に視覚につながっているということを、特に色彩に着目して産業構造も含めて壮大なスケールで示してくれているものでした。
バナナやオレンジなど熱帯の果物の例、バターやマーガリンなどの加工食品の例、合成着色料のこと、食をめぐる良妻賢母のイメージ、食料品を売るスーパーマーケットの仕組みなど、普段何気なく食べている物が、様々な変遷をたどって私達に届いていることが分かり、大変面白い本だと思いました。
推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)