荒物問屋に奉公に出ているお春は、母親に似ているお多福の面を大切にしていて、仕事の合間にそれを見ては寂しさを紛らわしていました。若旦那の徳兵衛がちょっとしたいたずら心からそのお面を鬼の面にすり替えて……。
川端誠さんの落語絵本シリーズの1冊です。同シリーズの絵本もある「じゅげむ」「めぐろのさんま」「まんじゅうこわい」ほど有名ではない落語ですが、母親のことを思うお春、お面をタダで譲った道具屋、お春のことを案じる荒物屋の主人善右衛門、その荒物屋のことを思ってすぐに行動するお春の父親利平など、互いを思いやる気持ちに溢れた人々が出てくる、心温まるお話です。
推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)