大人の本棚・こどもの本棚

ぐるんぱのようちえん

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この春、入園や入学、就職などで新天地にデビューする皆さんに、出版60周年を迎えたこの絵本を紹介します。

ぞうの“ぐるんぱ”は、体は大きいけれど、一人ぼっちでいつもめそめそしています。見かねた動物たちが、ぐるんぱを人間の町に働きに行かせますが、どこへ行っても失敗ばかり。びすけっと屋さ
んでも、くつ屋さんでも、自動車工場でも、作るものが巨大すぎて、すぐクビになってしまうのです。ぐるんぱは、しょんぼり、しょんぼり、しょんぼり。また涙が出そうになります。ところが、12人も子どもがいるおかあさんに声をかけられて…。

数年前、転勤したばかりの小学校で1年生にこの絵本を読んでいたとき、「ぐるんぱは、私だ。」とハッとしたことがあります。初めての場所で、自分の言葉や行動が空回りしているようで、気落ち
していたのです。

絵本のラスト、ぐるんぱは自分の作った大きなものを生かして、子どもたちのために幼稚園を開きます。色鮮やかで元気いっぱいに描かれた場面は、見ていた子が「絵の中に入りたい!」と言ったほ
ど。ぐるんぱの笑顔もかがやいています。

新人の皆さん、新しい環境で初めはうまくいかないこともありますが、ぐるんぱのようにいろんなことにトライしてみてください。あなたの技が役立つ機会がきっとやってくると思います。

 

田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)

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