人に心を閉ざした9歳のシルヴィアは、祖母に引きとられ、ニュー・イングランドの農場で暮らしています。牛を追って野山を歩きまわるうちに、自然や鳥たちはかけがえのない友となりました。
ある日、鳥採集の若者が白さぎを探しに農場にやってきます。一緒に森を歩き、さまざまな鳥の話をしてくれる若者に、シルヴィアは心を奪われ、強い憧れを抱きます。若者のために巣を見つけよう、
そう決心したシルヴィアは、朝早く森のはずれにある松の大木に登っていきます。そこへ一羽の白さぎが飛んで来て…。
初めて感じた人への激しい想いと、自然の生命を愛し敬う心。少女の衝動と葛藤が、細やかに綴られます。シルヴィアは白さぎの秘密を若者に告げるのか、ストーリーもさることながら、文章そのもの
が味わい深い短編物語です。
墨絵のように描かれた森や、彩色された朝焼けの海など、クーニ―の挿絵がとても美しく、心に残ります。
田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)