大人の本棚・こどもの本棚

たんぽぽの日々

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この本は、俵万智が母として、こどもの世界、親の心を短歌とエッセイで綴った歌集です。短歌の一首ごとにほっとするような写真とエッセイがついていて、どのページからでも読むことができます。「たんぽぽの綿毛を吹いてみせてやる いつかおまえも飛んでゆくから」という一首があります。地面に根をはるたんぽぽの母は、綿毛になって飛んでいくこどもたちのこれからを見とどけられない、それは我が子の将来を見とどけられない自分も同じで、綿毛になって飛んでいったらもう、あとはただ、風に祈るばかり。我が子と一緒にいられる時間を、俵万智は「たんぽぽの日々」と表現しています。

こどもとたんぽぽの日々を過ごしている怒涛の日々は、かけがえのないものですが、時には泣きたくもなるし、自分の自信のなさ、時間のなさにもどかしく感じたりもします。そんな時、この本の31文字の短歌のどれかを心のポケットにしまっておいて、そっと取り出してみてください。きっと、明日に向かう元気を得られると思います。著者の近著『生きる言葉』の中では、『たんぽぽの日々』その後の、高校生の頃の息子さんのエピソードも出てきます。読み比べると、こどもの成長や親と子の時間の積み重ねも感じられます。

子育て中の方は、「今が一番良い時よ」と声をかけられることが多いと思います。真っ最中にはそうとは感じられないと思いますが、例えば、短い言葉で情景を紡ぐ短歌を一首、心の中に留めて呟いてみることで、自分の姿を俯瞰することができて、少しだけ楽になるかもしれません。

あなたの「たんぽぽの日々」が、いつか宝物になりますように。

推薦者:新潟市立亀田図書館  岩崎 久美子

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