
四歳を過ぎた頃から、こどもが昔話に興味を持ち始めました。就寝前に昔話を聞きたがるので、昔話がたくさん収録されている本があれば…と考えていたところに思い出したのが、私が幼い頃に自宅にあった『日本の昔話 全五巻』のセットでした。
日本全国の昔話が一巻に約60話も収録されているこのセットは、まさにぴったり。知らない昔話が山のように収録されていました。絵本でおなじみの『大工と鬼六』や『馬方やまんば』、『笠地蔵』(いずれの題もこの図書では漢字表記)などもあり、絵本とは違った赤羽末吉さんのさし絵は特別感があります。
昔話といえば、「めでたしめでたし」で終わったり、因果応報の教訓を伝えたりするような話のイメージを持ちます。しかし、たくさんの昔話を読むうちに、『おんちょろちょろの穴のぞき』のようにユーモラスな話や、『雪娘』のように悲しさが漂う話など、一筋縄ではいかない展開が繰り広げられることこそが、昔話の真髄だと感じました。
また、『しょうとんどの鬼退治』では、鬼への仕返しは成功しても食べられてしまったひなは戻ってこなかったり、『源兵衛淵の大なまず』では、源兵衛に助けてもらう約束を取り付けていたなまずが、結局は助けを得られずに大ぐもに敗れてしまったりと、不条理な話も少なくありません。
それでも、こどもが嫌がりもせずに聞き続けている姿を見ていると、人間は本質的にそうした割り切れなさを含めた物語を求め、自然と受け入れられる素地があるのだと思わされます。
昔話の研究を続けられた小澤俊夫さんが、信念をもって原話を収集、再話したことで完成したこのセットを読み継いでいけることに感謝するとともに、その繋がりを絶やさないようにしたいと思います。

推薦者:稲垣 彩(新潟県立図書館主任司書 児童書担当 2児の母)
新潟県立図書館のホームページにBSNキッズプロジェクトの「大人の本棚・こどもの本棚」で紹介された本のリストが紹介されています。こちらもどうぞご利用ください。
