春は巣立ちの季節。希望と不安で胸をふくらませている新1年生に、ぜひ読んであげたい絵本です。
お母さんと暮らしていたこすずめは、翼をパタパタさせることができるようになり、飛び方を教えてもらいます。ちゃんと空中に浮かんだこすずめは、「ぼく一人で世界中を見てこられる」と、自信満々で遠くへ飛んでいきます。そのうち羽がいたくなり、巣の中にいたカラスや山ばと、ふくろうに、休ませてもらえるようお願いしますが、「おまえは仲間じゃないから」と断られてしまうのです。日が暮れて、力尽きたこすずめが地面を歩いていくと、心配したお母さんが探しに来てくれました!巣に帰り、お母さんの翼の下で眠るこすずめの表情は、安らぎに満ちています。
以前、本書を1年以上くりかえし読んでいた子どもに出会ったことがあり、この絵本には子どもの求めているものが詰まっていると気づかされました。訳文と絵の魅力が、お話の世界を一層豊かにしています。 (幼児から小学校低学年)
田村梓(新潟市立小学校の学校司書。こどもたちと本や昔話を楽しんで、28年目になりました。公共図書館や幼稚園でも、こどもと本をつなぐ活動をしています。)