植物を上手に育てる才能を英語で「green fingers」(グリーン・フィンガーズ)といいます。この言葉がタイトルになっている物語の主人公、チト少年の親指には不思議な力がありました。彼は、どこにでも種から芽を出させ、花を咲かせることができる「みどりのゆび」を持っていたのです。
やさしい両親に愛され、何の不自由もなく暮らしているチトは、ひとの悲しさや貧しさ、苦しさに敏感です。なにかをせずにはいられません。「みどりのゆび」を使って、刑務所に花を咲かせ、囚人たちに感動する心と、草木を育てる楽しさを呼び起こします。病気の少女の病室を花で包み、笑顔と生きる喜びをもたらします。動物園の檻を動物たちのふるさとの植物でいっぱいにし、ふるさとを離れて寂しがっている動物たちを喜ばせます。
花や緑は、ひとを幸せな気持ちにしますよね。チトは花を咲かせれば世の中がもっとよくなると考えます。彼が咲かせた花によって、街の外観だけでなく、そこで暮らす人々の気持ちも穏やかで幸せなものに変わっていきます。
ところが……。戦争が始まり、お父さんの工場が大忙しになったことで、チトは愛するお父さんが武器を作っている商人だと知ってしまいます。心を痛めたチトが、「ぼくにできること」を考え、とった行動とはなんだったでしょう?続きは読んでみてください。読み終わったとき、あたたかい気持ちになれる物語です。
推薦者:有本 教子(新潟県立図書館司書。こども図書室担当。2女1男の母。)