発達心理学者の著者が、幼い子どもの子育てについて提案した本です。書名の「子育ての知恵」とは、養育者が持つべき「子育てについて筋道をたてて考え、判断する能力」のことですが、その知恵は社会の変化や新しい科学的証拠によって、適宜、修正されるべきものでもあると著者は述べています。
本書は、心の発達とは何かを説明した第1章、母親についての神話を再考した第2章、幼児の人間関係の調査を紹介した第3章、発達の当事者としての子どもを考えることの大切さを述べた第4章、子どもが育つ社会についてまた大人の責任について論じた第5章で構成されています。中でも私が重要だと思うのは第5章です。これからは、子育てを養育者個人の努力だけに帰結させるのではなく、社会という大きな状況の中で行われるものであるとして捉え、改善していく必要があると考えます。
推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)