大人の本棚・こどもの本棚

バトラーさんの贈り物 『クシュラの奇跡』と歩んだ日々

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1984年にのら書店から刊行された『クシュラの奇跡―140冊の絵本との日々―』は、重い障害を持って生まれたニュージーランドの少女クシュラが絵本とともにどのように生きてきかたを、祖母ドロシー・バトラーさんがオークランド大学に提出した学位論文を元に書いた、障害児の読書を語る時に欠かせない名著です。2006年には『クシュラの奇跡』の「普及版」も出版され、この「大人の本棚・こどもの本棚」のサイトでも中山英さんによって推薦・紹介されています。多様な個性を持ったすべての人に読書の機会が求められる現代にあって、『クシュラの奇跡』の重要性はさらに一層増してきていると言えるでしょう。

本書は、『クシュラの奇跡』の翻訳を担当した百々佑利子さんが、バトラーさんの生涯と『クシュラの奇跡』出版の経緯、出版後のことをまとめてくださったもので、あの名著が世の中に出るにはどのようなことがあったのか、また、その影響はどのようなものだったかを見ることができます。私も20年ほど前にニュージーランドで学会があった際に、百々さんに国際児童図書評議会IBBYの会長であった島多代さんと一緒に連れて行っていただき、ドロシー・バトラーさんのお宅を訪問したことがありました。今回百々さんが本書を記し、誰でも『クシュラの奇跡』の背景を知ることができるようにしてくださったことはとても価値があることと考え、本書を推薦させていただくことにしました。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)

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