大人の本棚・こどもの本棚

ぼくは川のように話す

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2022年心に残ったのは、カナダの詩人が自身の体験をもとにつづったこの絵本でした。

吃音のある“ぼく”は、学校に行くことが苦痛だった。先生にあてられると、みんながぼくをじっと見る。唇がゆがんでふるえ、うまくしゃべれずに口をつぐんでしまう。
ある日おとうさんは、ぼくを川へ連れていき、肩を抱いてこう言った。「ほら、川の水を見てみろ。あれが、おまえの話し方だ。」泡だって、波をうち、渦をまいて、くだけている川。その流れを見つめるうち、石のように固まっていた心がほぐれていく。「ぼくは川のように話す。」「これがぼくの話し方。」

詩的な文章と、“ぼく”の心情や、光あふれる川の流れを描いた絵、どちらも素晴らしく胸を打たれます。10代の頃、私も人前でうまく話せなかったことや、黙っている子どもの心の内にも、豊かな言葉の世界があることを思い出させてくれました。
カナダ、ニューヨーク、日本で複数の賞を受賞しています。

田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)

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