宮沢賢治の『やまなし』を学んだ6年生が、『セロひきのゴーシュ』と『よだかの星』をみんなで読んだそうです。子ども達の感想を聞かせてもらっているうちに、私もこの本を再読したくなりました。
金星音楽団のセロ(チェロ)ひきのゴーシュは、演奏が下手で、いつも楽長に叱られてばかり。セロも粗末で、何度ひいてもうまくゆかず、悲しくて悔しくて涙をぼろぼろ流します。
家に帰り、夜なべで練習をしていると、動物たちが訪ねてきます。“トロメライ”を聞いてあげるという生意気なねこ。ドレミファを教えてと頼むかっこう。小太鼓の練習をするたぬきの子。病気の子を連れてきた母ねずみ。ゴーシュはあれこれ言ってくる動物たちに腹を立て、追っ払おうとしますが…。
そして演奏会の日、ゴーシュは観客の拍手喝采を浴びます! ゴーシュを変えたものは何だったのか? 皆さんも読んで感じてみてください。
茂田井武の挿絵は、素朴で力強く温かみがあり、どの画家の絵よりもこの物語にふさわしいと思います。病を押して仕事を引き受けたという茂田井と、ゴーシュの精神が重なるようです。編集者だった松居直氏が、『絵本のよろこび』(松居直/著 日本放送出版協会)の中で、この本が生まれるまでの経緯を語っていて、胸を打たれます。
田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)