大人の本棚・こどもの本棚

デジタル・シティズンシップ

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子どもがデジタル市民になるための教育について述べた本です。大人が決めた約束を守らせる日本の旧来の情報モラル教育ではなく、子どもがデジタルを用いて自分で行動することができるようになるための教育です。アメリカ、ヨーロッパ、OECDやユネスコと日本のデジタル・シティズンシップ教育を比較した上で、これからを展望しています。

私が強く同意するのは、第3章第2節「教育情報化の失敗のカラクリを考える」にある「教員主導型のICT活用では授業を牽引できない」というところです。日本の典型的ICT活用授業は、教員主導で緻密な授業が進められ、具体的な指示とともに3~5分といった短時間子どもがICTを用います。一方で、海外では、教員が冒頭の数分でやるべきことを指示したら、後は子どもがICTを使ってペアワークやグループワークをすることにたっぷり時間が割かれます。これらは私自身の内外の授業参観経験とも重なります。

私の考えでは、前者の日本の授業は、ICTはあくまで手段で本来の目的のためには能率の良いものだったかもしれませんが、デジタル市民になるための教育という点からは子どもにその機会を十分に提供してこなかったと言えるのではないかと思います。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)

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