著者のカジポン・マルコ・残月氏は自らを「墓マイラー」と呼び、様々なジャンルの芸術家の墓参をしています。その動機は「感謝の気持ちを伝えたい」なのだそうです。「墓前では、偉大な芸術家たちの存在がリアルになる」とも言っています。芸術に親しむのに、こんなユニークで面白いアプローチがあったのかと驚きました。

本書は、特に音楽家（作曲者、演奏家、歌手、指揮者など）に絞って、カジポン氏の墓地巡礼経験を語ったものです。音楽家の業績や人となりを調べた伝記的部分と、墓参の際のエピソードを語った部分が絶妙に組み合わせられています。伝記的部分については丁寧によく調べてあると思いますし、エピソードには笑ってしまったりほっこりしたりします。そのほか、劇場など音楽スポットの紹介もあり、音楽好きにはたまらない一冊でしょう。写真や装丁が美しいのもこの本の大きな特徴です。

推薦者：足立幸子（新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。）