キュレーター(美術館員)で小説家の原田マハさんによる『小説新潮』に掲載された6編の短編を1冊の本にまとめた短編集です。有名な絵画の作品名がそれぞれの短編のタイトルになっていて、その絵画に関係するエピソードが盛り込まれています。しかし、その元の絵画を知らなくても楽しめるものになっています。親子・兄弟・同僚との関係の中で、登場人物は、努力したり後悔したりしながら、それぞれの生き方を探っています。
私がこの本が好きな理由は2点あります。1点目は、読みながら頭に思い浮かべるその映像がとても美しいことです。色彩がとても鮮やかなのです。2点目は、キュレーター、画商、画集の編集者、絵の顧客、芸術大学の教授、画家など、美術と関わりながら生きている様々な人たちが登場するところです。それぞれがかっこいいと思いますし、仕事も立場も知らないことがいろいろあって、大変面白いです。
これは「アート小説」という新しいジャンルの小説だという人もいます。今度はぜひ原田マハさんの長編小説も読んでみたいです。
推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)