パレスチナを取材しようとやってきたテレビの記者マックスは、羊飼いの少年サイードと出会います。サイードは兄を兵士に殺されてから、話すことができなくなってしまいました。パレスチナとイスラエルを隔てる壁。サイードは壁のこちら側でカイト(凧)を上げ、糸を切って壁の向こうに飛ばします。マックスは、それを見て壁の向こうも取材することを決め、出発しようとしますが、その時思わぬ光景を目にします。
戦争をどのように描くかは、児童文学の重く難しいテーマであり、本書はその難しいテーマに果敢に挑んでいます。それに加えて、言葉が通じなくても心が通じ合うこと、それぞれの場所で人々が家族を思いながら暮らしていることが、とても美しく描かれています。
推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)