柿が熟す頃になると、毎年読んでいる絵本です。
日本の五大昔話の一つ「さるかに合戦」の本はたくさんありますが、一押しは、初版1959年の本書。言葉のリズムとゆかいな絵が、群を抜いて子どもをひきつけます。
劇作家の木下順二は、佐渡の昔話をベースに、個性的な文体で語りを再話しました。カニが仲間を増やして仇討ちに行く場面は、「かにどん かにどん、どこへゆく」「さるのばんばへ あだうちに」「こしに つけとるのは、そら なんだ」「にっぽんいちの きびだんご」「いっちょ くだはり、なかまに なろう」「なかまに なるなら やろうたい」という名調子の繰り返し。子どもはすっかり覚えて、一緒に口ずさみます。
漫画家による墨絵は、おおらかさと、とぼけた味わいで笑いを誘い、サルがこてんぱんにやられる結末は、拍手喝采です。 黙読するより読んでもらうと、がぜん面白くなるのが昔話。この秋ぜひ、子どもたちに読んであげてください。小型と大型の版があります。
田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)