中高生の皆さんは、アニメ映画「火垂るの墓」(野坂昭如/原作)を観たことがありますか?
ご紹介する小冊子(63p)は、この映画の監督 高畑勲さんの講演をまとめたものです。ご自身の「戦争体験」と、戦後に受けた「民主主義教育」について語り、「戦争を欲しないならば、何をなすべきか」と私たちに問いかけます。
皆さんならどう答えるでしょう? 戦争について書かれた本やマンガ、記事を読む、映画や記録写真を観る、戦争体験者の証言を聞く、などの声があがりそうです。知ることはとても大切で、「火垂るの墓」からも、耐え難い戦争の残酷さを追体験することができます。
ところが高畑さんは、「悲惨な体験をいくら語ってみても、将来の戦争を防ぐためには大して役に立たないだろう」と言うのです。そして「そうなる前のこと、どうして戦争を始めてしまったのか、ど
うしたら始めないで済むのか」、戦時中「為政者は、国民は、いったいどう振る舞ったのか」について、「もっと学ばなければならない」、と語りかけます。
さらに、日本人がもっているいくつかの「体質」をあげ、「恐ろしい」と指摘します。今の私たちにも続くこの「体質」については、本書を読んで確かめてみてください。
9歳で岡山空襲に合い、焼夷弾の中を逃げ惑った体験に基づく言葉、戦後から現代にいたる社会を鋭く見つめる眼には、説得力があります。 戦争と平和について考え、行動するときの手がかりにしてほしい入門書です。
田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)