花の好きな皇帝は年をとったので、花の力を借りて、世継ぎを決めることになりました。国中の子どもに花の種を渡し、それを1年間育てさせるのです。花の大好きな男の子ピンは、皇帝にもらった花の種を一生懸命に育てますが、一向に芽を出しません。1年経った日、ピンの父親は、「おまえはいっしょうけんめいに、できるかぎりのことをしたじゃないか。むねをはって、そのうえきばちを皇帝にみていただきなさい」と言うのです。
作者のデミは、アメリカで100冊以上もの絵本を出版している著名な絵本作家です。この本のストーリーは意外性があって大変おもしろいのですが、私が最も惹かれたのは、中国風の絵の色彩の豊かさと上品さ、人物の可愛らしさ、構図の素晴らしさでした。訳者も同じように感じたのでしょう、数あるデミの作品のうち、本作が最初に日本語に翻訳され、日本の人たちに紹介されることになりました。
推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)