大人の本棚・こどもの本棚

ミ・ト・ン

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物語は、近現代の北欧に似たルップマイゼ共和国のある家の蒸し風呂で、少女マリカが生まれるところから始まります。

そこは、とても寒い地域ですが、ミトンを編むことが女性の生活に根差し、歌と踊りを愛する温かい心を持った人々が住む国です。そんな国に生まれたマリカは、両親と兄弟、祖父母に愛されて育ち、やがて恋した青年と結婚します。

ミトンを中心とした北欧の風習や自然と共存する様子が、マリカの生涯を通して伝わってきます。その中でも、ミトンに記される模様にはそれぞれ意味があり、寒い国に生きてきた民族の歴史と想いが詰まっています。ひとめひとめにその想いを詰めたミトンを贈ることで、言葉で伝えきれない愛を伝える素敵な風習に心が温まります。

作中で「ルップマイゼ共和国の人々は、つらいときこそ、思いっきり笑うのです。」という一文があります。笑い合うことでお互いに励まし合い、辛いことを乗り越えていくとのことです。先の見通せない昨今ですが、マリカのように日々の中に小さな幸せを見つけて笑顔を交わしあえるよう、まずはこの小説をお勧めます。

推薦者:吉澤未由(ほんぽーと新潟市立中央図書館 サービス1グループ 司書)

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