大人の本棚・こどもの本棚

モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

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『はてしない物語』『鏡のなかの鏡』と並ぶ、ミヒャエル・エンデの代表作で、最近は雑誌やメディアでも特集されることが多いようです。

主人公は円形劇場跡に暮らすモモという女の子。くしゃくしゃにもつれた真っ黒なまき毛と、すばらしくうつくしい黒い大きな目。だぶだぶの上着につぎはぎのスカート、冬以外は裸足ですごすという、ちょっと異様な見かけの子どもです。けれども、モモは相手の話をひたすらに聞くことができ、相手はモモに話すことでとても楽になれる、という不思議な魅力をもっています。そして、モモには2人の親友がいます。無口な道路掃除夫のおじいさん「ベッポ」と、観光ガイドをする器量よしの若者「ジジ」です。この一見奇妙な組み合わせの3人の友情と、陽気な町の人々に忍び寄る「灰色の男たち」。そして人々から次第に時間が無くなり、余裕が無くなり、笑顔が無くなって…。

純粋に児童文学のファンタジーとして楽しめる物語であるとともに、大人や社会への強烈なメッセージを感じます。約50年前に書かれた本ですが、現代においても豊かさとはなにか、幸せとは何かという、よりいっそう鮮明な問いかけをしているように感じます。エンデの「作者のみじかいあとがき」にも次のようにあります。「過去に起こったことのように話しましたね。でもそれを将来起こることとしてお話ししてもよかったんですよ。わたしにとっては、どちらでもそう大きなちがいはありません。」

エンデ自身によって描かれた挿絵も魅力の一つです。

推薦者:田野辺 淳子(絵本の家「ゆきぼうし」副代表。「ゆきぼうし」のある守門村(現魚沼市)で子育てをするため、2001年に新潟市西区から家族で移住。以来、「ゆきぼうし」スタッフの活動を続ける。現在は、高校で書道講師として勤務。)

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