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村田エフェンディ滞土録

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村田という名の日本人研究員(エフェンディ=学問を修めた人物)の青年が、土耳古(トルコ)に考古学研究のために滞在した模様を表した小説です。

1899年(明治32年)という第一次世界大戦前の暗雲立ちこめる時代設定ではありますが、村田青年の周りには、宿主のイギリス人、留学仲間で下宿人のドイツ人・ギリシャ人、使用人のトルコ人などが魅力的で個性的な人達が集まり、賑やかに明るく暮らしています。拾われてきて住み着いた鸚鵡(オウム)も絶妙のタイミングで面白い言葉を言い、雰囲気を楽しくするのに一役買っています。考古学におけるシュリーマンの功罪や、宗教における神の概念など、同じ事象でも立場が異なれば見え方が異なることを、村田青年はこれらの人達と話し合いながら穏やかに理解していくのです。

人には様々な歴史や背景があるが、文化や宗教の違いを超えて尊重しあいながら生きていけるということを、慈愛に満ちた上品なトーンで描いた作品です。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)

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