大人になって子どもと一緒に読む絵本は、ふいに大人のほうがぐっとくることがあります。この鬼の名作絵本もその1冊。子どもにとって鬼は「強い」「怖い」「悪者」というイメージがあり、この物語の鬼のやさしさは予想外であり、むしろ物足りないと思う。
ただ、大人は違います。ぜんぜん話が違うかもしれませんが、例えば、勝利したスポーツ選手や成功した人が口を揃えて「支えてくれた家族やスタッフに感謝」の意を述べるのは、自分がその頂に立つまでに、彼のために多くの人が自己犠牲を払い、また、ライバルを踏み越えたこともあるでしょう、それを知っているからこそ、でる言葉なのです。世知辛い世の中ですが、いつまでも、こういった無私の心があり続けますようにと願うばかりです。
中山 英(萬松堂本店店長兼出版社島屋六平出版営業課長。1児(4歳娘)の父。育児と読書の日々を過ごしています。)