絵本作家の大御所・せなけいこさんといえば、「ねないこだれだ」「めがねうさぎ」「いやだいやだ」などたくさんの作品を思い浮かびますが、子育てについて大人向けに書いた読みものとしては、本書が唯一の本になります。
とても意外に思います。絵本作家はキャリアが長くなるほど、エッセイも書かれます。「ぐりとぐら」の中川李枝子さんも、かこさとしさんも数多く残されています。ただ、せなさんのこの本は、唯一のエッセイだけあって、驚きの内容です。
代名詞の「ねないこだれだ」「にんじん」「もじゃもじゃ」「いやだいやだ」4冊はデビュー作であり、おばけ絵本を得意としている先生というイメージがくつがえされます。
まさに、切り絵という作風が独特であるように、子育ても個性的です。
せなさんが幼い息子さんに「ねないこだれだ」を読んでいたとき、最後の『おばけになってとんでいけ』というところで、息子さんから、なんともすごい反応がかえってきて驚いたそうです。その息子さんこそ、言語学者の黒田龍之助さんです。このエピソード、妙に納得できます。
中山 英(萬松堂本店店長兼出版社島屋六平出版営業課長。1児(3歳娘)の父。育児と読書の日々を過ごしています。)