100年以上前、自然と野生動物を愛するシートンは、自身が出会った動物たちの物語を次々に発表しました。「オオカミ王　ロボ」は、その中で最も有名な実話です。

アメリカのニューメキシコの大農場に、６頭のオオカミの群れが現れ、５年間に2000頭もの牛が餌食になりました。その群れのリーダーがロボ。並外れて大きく賢く、どんな罠にもかかりません。そこでシートンがロボ退治を依頼されますが、巧妙に仕組んだ毒餌も見破られ打つ手がありません。それでも群れの観察を続け、やがてロボの弱点を発見、新たな作戦を立てたのです。

この出来事の後シートンは、「動物の本能は殺意ある人間にまさる」「人と動物は同じ仲間、種が違うだけ」「これからは決して動物を殺さない」と誓い、自分のサインにオオカミの足跡を描くことにしたそうです。私もロボの情の深さに胸を打たれ、野生動物への尊敬の念をあらたにしました。

シートン動物記は数社から刊行されていますが、こちらの全15巻シリーズは完訳で、画家でもあったシートンの絵がふんだんに添えられ、臨場感があります。巻末の解説はＱ＆Ａ形式で、動物の生態や当時の社会のことを分かりやすく伝えています。
人間と動物、自然との関係について、考えさせられる傑作です。

田村 梓（新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。）