大人の本棚・こどもの本棚

オリオンの上

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壮大な夜空を見上げた時や、広い海にポツンと浮かぶ船を見た時に。
自分だけが取り残されているような、寂しさを感じたことはありませんか。
この作品は、そんな寂しさや虚しさを抱えた主人公が、自分や周囲と向き合い、歩んでいく物語です。

中学1年生の麻由子は吹奏楽部に所属しています。顧問の先生「サヒメ」は、熱心に指導やアドバイスをしてくれますが、麻由子はサヒメの言葉がどうにも理解できません。

「ただの音は出さない」
「音楽は言葉でもあるのよ」
「ひとつひとつの音符が、人間と思って」

さらに「今何が見える?どんな気持ち?」と、サヒメは部員たちにたたみかけます。

サヒメの熱意に応え演奏に没入していく部員たちをみて、麻由子は戸惑い、だんだん部の雰囲気についていけなくなります。家に帰っても気が休まらず、麻由子は自分の居場所を見失っていくような感覚をおぼえ、思い悩む日々が続きます。

過ぎ行く日常の中、麻由子は、今自分が見ているもの、聞いている音、そして目の前にいる人に向き合い、自分なりの見方・聞き方・考え方で受け止めようと試みます。最後に到達したのは、等身大の自分をそっと肯定する、麻由子なりのひとつの結論でした。

「わからない」ことや、抱えた悩みにどう向き合うか、その向き合い方は人によって、また時によって千差万別です。頑張って立ち向かってもいいし、さっさと逃げてもいい。答えは一つではなく、グラデーションのように変化したり、くもり空のようにすっきりしないこともあります。
それでもいいのだと、静かに寄り添ってくれるような1冊です。

 

推薦者:佐藤 江理子(新潟県立図書館司書。ユースコーナー担当)

新潟県立図書館のホームページにBSNキッズプロジェクトの「大人の本棚・こどもの本棚」で紹介された本のリストが紹介されています。こちらもどうぞご利用ください。

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