大人の本棚・こどもの本棚

おとうさんのちず

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戦火から逃れるために遠い国にやってきたぼくの一家は、別の夫婦と一緒に小さな家で暮らすことになりました。寝るのは土を固めた床の上で、おもちゃも本も食べるものも十分にありませんでした。ある日のこと、パンを買いに市場に出かけたお父さんは、パンを買わずに地図を買ってきたのです。最初ぼくはお父さんを許せないと怒りました。しかし、地図を見ていると、世界のいろいろなところに行く想像ができるのです。僕は地図に夢中になり、パンを買わなかったお父さんは正しかったと思ったのでした。

作者ユリ・シュルヴィッツは、1934年ポーランドのワルシャワに生まれ、4歳で第2次世界大戦から逃れるためにワルシャワを離れ、当時ソ連であったトルキスタン(現在のカザフスタン)で暮らしました。その時の経験を基にしているのだそうです。子どもの持つ想像力の素晴らしさが描かれていると思います。日本の子どもたちには、この絵本を読んで、難民など苦境の中で懸命に生きている世界中の人達に思いをはせてもらいたいと思います。

足立幸子(新潟大学教育学部准教授 新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境を研究している。)

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