大人の本棚・こどもの本棚

パラリンピックは世界をかえる

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“パラリンピックの父” といわれるユダヤ人の神経外科医 グットマンの生涯をえがいた伝記を紹介します。

第2次大戦下、医師だったグットマンは、ナチスの迫害を逃れてイギリスに亡命しました。当時、戦争で脊髄を損傷した患者は、治療法がなく死を待つだけでした。グットマンは、床ずれや膀胱感染を防ぐため、寝返りや尿道カテーテルを編みだします。患者が回復すると、叱咤激励して、歩行訓練と車椅子の使用をうながしました。

患者達は車椅子でポロをするほど活動的になり、グットマンは病院で競技会を開催。それが1960年の第1回パラリンピックへと発展します。

半身不随の患者達に、生きる希望と目的を与え、スポーツの楽しさや仲間との友情をもたらしたグットマンの業績は計り知れません。

横書きの文章に、明るいイラストや写真が入って112ページと読みやすく、巻末に国枝慎吾選手など5人のパラリンピアンを紹介しています。

パンデミックの中でオリンピック・パラリンピックが開催され、選手達が健闘した一方で、さまざまな課題も浮き彫りになりました。スポーツの力や大会の意義をあらためて考えるためにも、原点となる精神を伝えてくれる本書を、せひ読んでほしいと思います。

田村 梓(新潟市立小学校の学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、29年目になりました。公共図書館などでも、子どもと本をつなぐ活動をしています。)

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