冬眠中に生まれた双子の坊や。
ふゆごもりの穴の中で聞こえる外からの音に耳をすませます。子熊にとって外の世界は不思議で知らないことばかり。外から聞こえる様々な音が気になって仕方がありません。
「かーん かーん って何の音?」すると、かあさん熊が優しく答えます。
「木こりが木を切る音でしょう。木こりはここまで来ないから、坊やはゆっくりおやすみね」
「ほっほー ほっほー って何のおと?」
「ふくろうの声でしょう。おかあさんに抱っこで、朝までおやすみよ」
ある日、坊やがたずねます。
「どうしてしーんと静かなの」
「雪がしんしん積もるのよ。まだ春は遠いから坊やはゆっくりおやすみよ」
「つっぴい つっぴい」は小鳥の歌う声。
「どどー どどー」は雪崩の音。雪が溶けだして春が近づきます。
ある日、坊やがたずねます。
「ぽとん ぽとん って何のおと?」
「あれは つららの溶ける音よ。もう そこまで春が来ているのよ」
ある日、坊やがたずねます。
「かあさん、鼻がくすぐったいよ。何だかいい匂いだね」
「春風よ、坊や。暖かな風が花の匂いを運んできたのよ。ようやく春がきたのよ」
春を待ちわびる熊の親子の姿を描いた絵本です。
「坊やはゆっくりおやすみね」の優しい語り口に聞き手の子どもたちは子熊たちと同じように温もりに包まれ安心感を抱くことでしょう。
少しずつ春の訪れを感じるこの季節、ぜひ読み聞かせをしていただきたい一冊です。
推薦者:野上 千恵子(新潟県立図書館子ども図書室有志の会代表。元図書館司書。新潟県立図書館、県立高校図書館を経て、新潟市の小・中学校図書館に勤務。子どもたちとお話や本の世界の愉しさを分かち合っています。)