石が好きなロバのシルベスターは、触れると望みがかなう魔法の赤い石をみつけます。早速、家族や友達の望みをかなえてあげようと帰路につきますが、途中のイチゴ山でお腹を空かせたライオンに出会い、慌てたシルベスターは身を守るために「ぼくは岩になりたい」と言ってしまいます。
ライオンをチョウチョに変えたり、家までとび帰るよう願ったりすれば良かったと思っても後の祭り…岩になったシルベスターは、動くことも、声を出すこともできず、そばに転がる魔法の石に触れる術がありません。
シルベスターの身に起きたことを知る由もなく、いつまでも帰らない息子を父さんと母さんがどれほど心配したか…表紙にもなっているその様子は、胸に迫るものがあります。
そして秋が来て寒く寂しい冬が過ぎ、春を迎えたある日、気晴らしにイチゴ山へ出かけた父さんと母さん。そこで、父さんと母さんがシルベスターを思い続ける気持ちとシルベスターの願いが、歯車のように噛み合って思わぬことが起こります!
誰も岩になったことがわからず、手がかりもない状況にむずむずする分、最後のイチゴ山のシーンは本当に晴れやかな気持ちになります。
ストーリーだけでなく、鮮やかな四季の風景や表情豊かな動物たちも印象に残る名作です。
推薦者:稲垣 彩(新潟県立図書館主任司書 児童書担当。1児の母)
新潟県立図書館のホームページにBSNキッズプロジェクトの「大人の本棚・こどもの本棚」で紹介された本のリストが紹介されています。こちらもどうぞご利用ください。