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三国志絵本 十万本の矢

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今から1800年前の中国が魏・呉・蜀の三国だった時代、協力して魏を倒すために蜀の軍師孔明が呉の王である孫権に会いに来ました。呉の軍師周瑜は有能な孔明をねたみ、陥れたいと考えました。周瑜は、魏と長江で戦うには船と弓矢が必要だが、呉には矢が十分ではない、そこで十万本の矢を十日のうちに作ってほしい、それができなければ命はない、と孔明に迫ったのです。しかし、孔明は三日もあれば十分だと答え、周瑜には秘密にして六百人の兵士に藁人形を作らせました。三日後長江に霧が出ている中、二十隻の船にその藁人形を乗せ、魏に呉の大軍がやってきたと見せかけて藁人形を射させることで、敵である魏から十万本の矢を調達したのでした。

三国志演義の有名なエピソードを、分かりやすい文章とダイナミックな絵であらわした良質な絵本です。前見返しに登場人物、後ろ見返しに地図が示されているのもよいと思います。三国志演義全体が分からなくても、単純に発想の転換を描いた面白い物語として十分に楽しめるものになっています。

足立幸子(新潟大学教育学部准教授 新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境を研究している。)

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