タイトルにある「世界のたね」とは原子のことで，本書は平易な言葉でしかも興味深く書かれた科学史の本です。科学の主要なトピックが網羅され，また，それぞれの発見に至った科学者のエピソードなどが豊富に盛り込まれ，読み物としてとても面白く読めるものになっています。

私の手元にはNHK出版から1999年に出版されたほぼ同じタイトルの単行本があり，その後継書となるような本が欲しいと思って探していたところ，改めて同じ訳者によって手直しをされたものが上下巻として角川文庫から2016年に出版されていることを知りました。

訳者が「単行本の出版時に読者層として想定していた若者たちのみならず，より幅広い年齢層の人達にも，一般教養書として読んでいただきたい」と言っているとおり，数章ごとに年表が差し込まれるなどの改訂が施され，さらに読みやすくなっている印象を受けました。

推薦者：足立幸子（新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。）