世界中の子どもたちに愛されている“おさるのジョージ”が誕生して、80年。作者レイ夫妻の半生と、出版までの経緯を描いた絵本を紹介します。
夫妻は、20世紀始め、ドイツのユダヤ人家庭に生まれました。絵の得意なハンスと芸術家のマルガレーテは、リオデジャネイロで出会い結婚します。動物好きの二人は小さなさるを飼い、やがてパリで暮らしながら、絵本作りをスタート。1939年に、知りたがりやのこざるのお話「フィフィのぼうけん」を書き始めます。
ところが、第2次世界大戦が始まり、1940年、ヒットラーの率いるドイツ軍がフランスに侵攻。パリは戦火を逃れた難民で溢れかえり、夫妻もアメリカへ渡るため、なんと! 自分で組み立てた自転車で、街を脱出します。「フィフィのぼうけん」を抱えて…。
国境をいくつも越える厳しい旅の間、二人は支え合い、周囲の助けを借りながら、絵本出版への希望を胸に進みました。そして1941年、アメリカで「Curious George」を世に出したのです!
本書は親しみやすい絵に、ハンスの手帳の記録や手紙、写真がそえられ、当時を物語ります。とびきり楽しい「ひとまねこざる」の背景に、こんな旅があったとは! 驚きと感動の実話です。
田村 梓(新潟市立小学校の学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、29年目になりました。公共図書館などでも、子どもと本をつなぐ活動をしています。)