「タマゾン川」という聞きなれない言葉のタイトル。そのとなりに「多摩川でいのちを考える」と追記されています。
この本が書かれる数年前から多摩川では、ピラニアやアリゲーターガーパイクなど、アマゾン川に生育する魚が次つぎと発見されていました。ほかにも、多摩川にいるはずのない、世界のあらゆる地域の魚が確認されたのです。
都会の真ん中を流れる川に、アマゾンの肉食魚や熱帯魚などの外来魚が生育している…この事実に著者の山崎さんは「タマ川じゃなくてタマゾン川ですよ」とつぶやきました。
「自然環境コンサルタント」という仕事をしている山崎さんは、多摩川の歴史を振り返り、警鐘を鳴らします。
奥多摩からの清流が流れる多摩川が、高度経済成長期の周辺開発によって、住宅地が造られ、家庭からの生活排水で汚れてドブ川になったこと。そのころ、日本中で公害が大きな社会問題となり、行政による働きかけや住民の協力によって、鮎も住めるきれいな川によみがえったこと。その後、無責任に放された外来魚が在来魚を食べて繁殖し、現在は水温の上昇によって外来魚の住みやすい川となって、在来魚が絶滅していっていること。
これらが、下水道やダム、生態系の仕組みと一緒に、写真や図版を使ってわかり易く書いてあり、読み進めると多摩川だけの問題ではなく、日本の川の多くに共通する話でもあると考えさせられます。
川を汚すのも、きれいにするのも、そして生態系を脅かすのもすべて人間であることがわかり、自分が住む街を流れる、身近な川と「いのち」について考えることができる一冊です。
推薦者:有本 教子(新潟県立図書館司書。こども図書室担当。2女1男の母。)
新潟県立図書館のホームページにBSNキッズプロジェクトの「大人の本棚・こどもの本棚」で紹介された本のリストが紹介されています。こちらもどうぞご利用ください。