大人の本棚・こどもの本棚

手で見るぼくの世界は

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この春から視覚支援学校の中学1年生になった佑は、新しいクラスメイトとまだ馴染めずなんとなく気詰まりな思いでいる。気詰まりの原因はもうひとつ。それは、小学生のころからのたった一人の同級生、双葉が学校に来ないことだ。

佑が白杖の練習をする場面がありますが、目からの情報なしに外を歩くにはものすごく集中する必要があることを改めて知りました。点字ブロックや信号機のスピーカーに身を任せればいいわけではなく、ポストなど道端の目印をチェックしておいて目的地までの道のりをしっかり頭の中でイメージしながら歩かなければいけません。白杖を持つ手に伝わる数歩先の情報、足の裏の感覚、周囲の音など、たくさんの刺激に注意しなければなりませんが、全てを受け取っていると疲れてしまいます。まさに訓練して身に付けるしかありません。不安や苛立ちを抑えられず八つ当たりしてしまい、それでも決意を新たに練習に励む佑の姿に、彼を応援する気持ちがわき上がってきます。

佑は白杖の練習に挑戦し、双葉はまた別の活動に挑戦していきます。それぞれが新しいことへの挑戦を通して外の世界に向き合っていく1年間のおはなしです。二人を応援しながら、目が見える人も見えない人も一緒に生きている社会で自分はどう動けるか、社会をどうしていきたいか考えていくことができると思います。

曽我 祥子(新潟市立豊栄図書館 司書)

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