大人の本棚・こどもの本棚

思いどおりになんて育たないー反ペアレンティングの科学ー

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邦題に惹かれて読み始めましたが、原題はThe Gardener and the Carpenter(庭師と木工職人)でした。副題にあるペアレンティングとは、20世紀後半にアメリカで広まった「親がなすべきこと」と思われている子育てにまつわる規範のことで、著者は心理学者の立場から、これを否定しています。子育ては、木工職人が木工物をつくるように考えられるべきではなく、庭師が庭をつくるように考えなければならない、というのが著者の主張です。木工職人は、手にしている材料を組み立てて、頭に思い描いていた構想と同じを形に完成させます。ですが、庭師は、植物がよく育つよう育成のための保護されたスペースをつくります。それは額に汗する重労働で、泥まみれになって穴を掘り肥料をまかなければなりません。しかしどれほど細かい計画を立てても、必ずしも計画どおりにはいかないこと、そしてむしろその計画どおりにならないことこそが庭づくりの醍醐味であると述べているのです。

私にとって興味深かったのは、後半で多くの紙面が割かれている、数々の実験から得られた子どもの学習と発達についての知見でした。子どもは大人のまねをして学ぶがどういう人のどんなことをまねするのか、遊びとはどのようなもので子どもは遊びから何を学んでいるのか、テクノロジーによって世代間の学習はどのように異なるのかが書かれています。「育つ」ということが、いかに親の意図しないことから影響を受けており、多面的で複雑であるのかがよく分かりました。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)

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