第二次大戦中、両親を早くに失い親代わりの祖母も亡くした兄妹 12歳のウィリアム、11歳のエドマンド、9歳のアンナは、ロンドンを離れ学童疎開をすることになります。家庭の温かさを知らない3人は、本当の親になってくれる人を求めて、田舎へ向かいました。ところが、待っていたのはつらい毎日。引き取られた初めの家ではひどい嫌がらせを受け、次の家は貧しくて家事や子守りをさせられます。
兄妹のよりどころとなったのは、図書館と司書のミュラーさんでした。話に耳を傾け、本をすすめてくれるミュラーさんは、どんな時も3人を信じ、優しく世話をやいてくれます。けれども村人たちからは冷たい目で見られ、どこか寂しそう。実は彼女自身も、心に深い傷をおっていたのです。
幼い弟妹を守ろうとする兄、理不尽なことは我慢できない弟など、人物が生き生きと個性的に描かれ、物語に引きこまれていきます。それぞれの苦しさを乗りこえて、家族を愛し愛される幸せが訪れるクリスマスのシーンは、とても印象的です。
2021年「ニューヨーク公共図書館ベストブックス」の1冊。
田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)