高い山に隔てられた、北の国と南の国がありました。言葉も、顔の色も、食べ物も、家の形も違う国。どちらの国も、一度も仲良しになったことがなかったので、お互いを恐ろしい国だと信じていました。そして、そんな2つの国の間でとうとう戦争が始まってしまったのです。
冬が来て、寒さに震えながら、塹壕(ざんごう)の中で過ごしていた北の国の若い兵士が、粘土を固めて土の笛を作り、吹き始めました。そのかすかな音色を聞いた南の国の兵士も、塹壕の土で笛を作りやさしい音色を響かせます。やがて春が来て、敵の様子をさぐり歩いていた2人の若い兵士がばったりでくわしてしまい…。
戦争で最前線に立たされるのは、どこの国でも位の低い若者達です。そして、お互い敵だと思い込んでいるだけで、相手のことを知れば、同じ人間なのだと思える。相手と直に接して知ることがどんなに大切かを感じることが出来る、素敵な1冊です。
田野辺淳子(絵本の家「ゆきぼうし」スタッフ。2001年「ゆきぼうし」のある守門村(現魚沼市)に家族で移住。仕事をしながら「ゆきぼうし」スタッフの活動を続ける。)