様々な伝説のあるイギリス・コーンウォール地方。トビーとジョーの兄弟はそこの海岸の貸別荘で、両親とともに夏休みを過ごしています。物語は、二人がエビとりのおじさんから不思議な石を見せてもらうところから始まります。それは珍しい、完全なたまごの形をした石でした。一目で気に入り、「海のたまご」だと感じた二人は、手に入れた石を秘密の磯だまりに運んで沈めます。さて、その“たまご”からは、いったい何が生まれるのでしょうか……?
仲のいいトビーとジョーのちょっと不思議な冒険が楽しい本ですが、圧巻なのは海の描写です。全編を通して言葉を尽くして語られる、潮の満ち引きや波の様子といった海の表情。物語のあちこちに顔を出し、生き生きと戯れるアザラシたち。海が本当に魅力的に描かれているからこそ、その中での二人の体験や心の動きが、とてもリアルに感じられます。夏の海の美しさと楽しさが、ギュッと詰まった一冊です。
木下希美(新津図書館 司書)