この時期は、クリスマス、そして正月と続き、ゲーム機やゲームソフトをプレゼントしてもらった子どもたちも多かったのではないかと思います。今世界中の子どもたちが、多くの時間をゲームやスマホをして楽しんでいます。しかし、心と体の健康にとって、医学的にかなり気をつけなければならない影響があることが分かってきています。
テレビやゲーム、ネット利用による医学的な影響には、これまで次のようなことが指摘されてきました。様々な能力の低下(運動能力、視力、集中力、記憶・学習能力、創造力)や生活習慣への影響(肥満、喫煙率の上昇、コレステロールの上昇など)、言語や社会性の発達への影響、精神面への影響(意欲の低下、攻撃性の亢進、大人になってからのうつ病の増加、仮想現実と現実との混乱)、そして、家族団欒の時間や友達との外遊び・おしゃべりの時間、何もしないでぼんやり過ごす時間、空想の時間、読書の時間、睡眠時間など、子どもの成長にとって大切な意味を持つ様々な時間が奪われていることなどが指摘されています。
さらに、近年のスマホの登場に代表される急速なメディアの変化によって、世界中の医師たちが、ネット・ゲーム依存症と考えざるを得ない大人や子どもと多く出会うようになり、アメリカ精神医学会や世界保健機構(WHO)は病気として認めざるを得なくなり、その診断基準を発表しています。そもそもゲーム依存症の危険性は、以前に発表された研究成果から指摘されていました。その研究によると、テレビゲームは覚醒剤と同様の脳内変化をもたらしていました。さらに、最近の中枢神経の様々な画像研究では、長時間ゲームやネットをしている人を調べてみると、麻薬・覚醒剤中毒患者と同じような脳内変化が起きていることが明らかになってきました。
実際に私の外来でも、ゲームを遅くまでやって夜更かしになり朝起きられない、昼夜逆転して学校に行かないで一日中ゲーム・ネットの生活になっている、ゲームでイライラして暴言や暴力を振るうようになった、親の知らない間にスマホのゲームで課金をして多額の請求がきた、親の財布からお金を盗ってゲームソフトを購入したなどなど、依存症というしかないような子どもたちと徐々に出会うようになってきています。
対策は簡単ではありませんが、いくつか大事なことがあります。まずは、夜更かしにはならないことが大切です。子どもたちに睡眠の大切さを医学的に説明しています。それから、親がゲームやスマホのことで注意をしたり、叱ったりの連続では逆効果であり、ゲームやスマホ以外にも、もっと楽しいことがあることを体験させるような工夫が必要です。ご両親には、子どもと楽しい時間を作ることをお勧めしています。さらには、予防として大切なものに、暖かさや愛情を感じることのできる家族内の安定した人間関係、幼少期の安定した親子関係、愛着形成があると考えています。愛着形成のことに関しては、次回紹介したいと思います。何事も、過ぎたるは及ばざるがごとしで、家庭で子どもと話し合ってルールを決めて、ゲームやスマホを上手に楽しむことが必要です。
1月18日(土)あさ9時~BSNラジオ「大杉りさのRcafe」放送予定