私たちに人間には血液型、顔つきや性格、お酒の強さなど、遺伝的に決まっている様々な「違い」があります。これらのバラエティーに富んだ「違い」はもちろん優劣ではなく、人間という生物が持っている「多様性」の一つです。
「生物多様性」という言葉をご存じでしょうか?地球上には様々な特徴を持った生物がいて、様々につながりながら、海、川、森といったバラエティーに富んだ生態系がつくられている、この生き物が持つ多様さのことを「生物多様性」と言います。生物多様性はSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の重要なキーワードですが、5文字の漢字が続きちょっと難しそう…、確かに国や地方自治体が行っている近年の認知度調査では6割ほどの方々が言葉を聞いたことがあると回答しているものの、意味まで知っている方は2~3割となっており、まだまだ認知度が低いと言わざるを得ません。
生物多様性というキーワードで暮らしを眺めてみると、私たちは生物多様性の恵みを得ながら暮らしていることを実感します。「食」という切り口で生物多様性を見てみましょう。例えば、今日の我が家の夕食はカレーライスでした。子どもたちと一緒に、カレーライスの中にどんな生き物が食材として使われているのかを調べてみました。ジャガイモはナス科ナス属の植物の地下茎、ニンジンはセリ科ニンジン属の植物の根、玉ねぎはヒガンバナ科ネギ属の植物の葉のつけねといった具合に、当然ですが野菜は生き物であり、カレーには多様な生き物が食材として使われていることがわかります。
野菜の他にも、カレーにはキノコ、肉、香辛料、油といった多様な生き物が食材として使われます。これは地球上に多様な生き物がいることの恵みです。また、トマトという生き物には甘い・酸味が強い品種があったり、日本酒やワインは材料(酒米やブドウ)と菌(コウジカビや酵母菌)の品種の多様性が味わいや香りの多様性につながったりします。これは生物に遺伝的な多様性があることの恵みです。さらには、山菜やキノコ採集、魚釣りを楽しめるのは、山や海、川といった多様な生態系がある恵みに他なりません。生き物が持つ遺伝的、種、生態系の多様性を人間が恵みとして享受していることを、食卓を見るだけでも十分垣間見ることができます。私たちは他の動物同様、生き物を食べて生きています。生物多様性の恵みがなければ生きていけないといっても過言ではありません。
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」では、陸上の生物多様性の重要性やその保全について位置づけています。今回のコラムでは「生物多様性」の考え方と、生物多様性が私たちの暮らしの持続可能性の根底に直結することを、食べ物という側面から紹介しました。キョロロでは、近年SDGs(ゴール15)をテーマとした修学旅行や体験学習、研修受け入れが増加しており、子どもたちの学びの場、社会活動等の場でも「生物多様性」というキーワードが大きくなっていると実感しています。里山の生物多様性に体験的に触れ、探求を深めることで、生物多様性が持続可能な社会とってどのような意味があるかを考えるきっかけを作っていきたいと考えています。