やっと秋の気配を感じられる日になりました。
この夏の新潟市は、30℃以上の真夏日が51日(5月21日が最初)、35℃以上の猛暑日が15日(気象庁9月11日現在)。合計66日が30℃超えでした。最高気温は8月1日の37.8℃。体感的には「40℃を超えたのでは」と思う日も少なくありませんでした。これからは体育祭や運動会などの季節。体調に気をつけて乗り切りましょう。
さて、今回のテーマは “はてなBOX” です。
中が見えない箱に手を入れて、中身を当てる──テレビでよく見た、あの企画。観客は中身を知っているけれど、芸人さんは恐る恐る手を伸ばす。おそらく“元祖リアクション芸”の一つでしょう。
もし、自分の前に “はてなBOX” があったら、手を入れて確かめますか?
年齢を重ねるほどに私たちは基本フレームワーク「5W1H:Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)」で考え、頭の中で状況整理をしがちです。
例えば……
① 授業中
Who:先生が仕掛けた? それともクラスメイト?
What:中に入っているのは教材? それとも罰ゲーム的なもの?
When:このタイミングで出てくる意味は?
Where:教室でやるにはちょっと怪しい雰囲気…
Why:学習の一環? それとも学生を試す心理的トリック?
How:堂々と出されたけれど、本当に安全なのか?
➡ 学生たちは「教育目的なのか、からかわれているのか分からず」ソワソワ。
② 余興中(イベントやパーティ)
Who:司会者? 仕掛け人? 誰が用意した?
What:豪華景品? それともハズレのネタアイテム?
When:余興の盛り上がりのピークで突然登場。
Where:ステージ上に置かれたBOXがやけに目立つ。
Why:笑わせるため? 驚かせるため? 本当にプレゼント?
How:皆の前で開けさせられる…外したら笑いものに?
➡ 観客や参加者は「期待と不安が入り混じった」疑心暗鬼状態。
③ 飲み会
Who:先輩? 幹事? いたずら好きの誰か?
What:お菓子? 景品? それともとんでもない罰ゲーム道具?
When:酔いが回った頃に突然テーブルへ。
Where:居酒屋の一角で開けるには場違いな雰囲気。
Why:盛り上げたいのか? それとも後輩を試しているのか?
How:開けろと煽られるが、酔った勢いで罠にハマるのでは?
➡ 飲み会メンバーは「笑いに変わるのか、恥をかかされるのか」読めず、疑心暗鬼に。
授業中なら:真面目さと遊びの境目が読めず疑う。
余興中なら:期待と不安が混じり、会場全体が揺さぶられる。
飲み会なら:酔いと上下関係の中で、仕掛けの意図を警戒する。
どの場面でも「期待と不安」が入り混じり、人は妙にソワソワします。
では、
保育の場で、3・4歳の子どもに “はてなBOX” を渡したらどうなるでしょう。中が見えない箱を前にして「さあ、何が入っていると思う?」と促すと、子どもたちはきっと期待と不安が入り混じった表情を見せるはずです。
発達段階から見ると、“はてなBOX” は「ドキドキとワクワク」を同時に引き出す刺激です。もしそれが「ご褒美」や「遊び」の文脈で登場すれば、好奇心や想像する力をぐっと引き出せます。
ただし、安心できる大人との関係が前提にないと、不安や恐怖を強める危うさもあります。教育・保育の視点から言えば、“はてなBOX” は両刃の剣。うまく使えば想像力や推論力の芽生えを支えますが、強引に開けさせたり脅かすように仕掛けたりすれば、子どもは「不安にさせられた」と感じ、信頼関係にマイナスの影響を残してしまうかもしれません。
では、この “はてなBOX” を子どもの日常に置き換えてみるとどうでしょう。
・初めて食べる料理は「味が分からない」からドキドキ。食べてみて初めて好き嫌いが形づくられます。
・新しい遊具は「できるかな?」という不確実性がつきものです。でも挑戦することで自信や探索心が育ちます。
・初めて出会う友だちは「優しいかな? 一緒に遊べるかな?」という不安と期待が同居します。実際に関わることで信頼や社会性を学びます。
・遠足や運動会といった行事も、当日にならないと何が起こるか分からない “はてなBOX”。驚きや感動を伴いながら子どもを成長させます。
つまり、“はてなBOX” は「未知」や「不確実性」の象徴。子どもは安心できる環境でこそ、その未知に挑み、柔軟性や回復力を育んでいきます。大人の役割は、不安が過剰にならないように少しだけ見通しを示し、ともに体験を楽しむことです。
親子で一緒に「“はてなBOX”=未知の体験」を味わいながら、子どもの成長の瞬間を共有してみてはいかがでしょうか。
私自身も、この冬に “はてなBOX” を一つ用意しています。娘のFLOORBALL世界大会の応援で、、12月にチェコへ10日間の一人旅。どんな旅になるか、期待と不安で胸がいっぱいです。
もう一つのお知らせ。
10月5日には、県立大学子ども学科の学生による「秋のファミリーコンサート」が開催されま
す。未知の楽しみを、ぜひご一緒に。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。9月20日は、新潟県立大学学生部長 大学院 健康栄養学研究科 教授 人間生活学部 こども学科 教授の伊藤巨志さんです。お楽しみに!