
手作りの歯みがきをつくって売り出そうとした12歳の男の子ルーファスが、億万長者になる話です。ルーファスは、様々な苦労を乗り越えて行くというよりは、いろいろなアイディアが浮かんできて、それを明るく精力的にやっていくという様子です。そして、その際に必ず「計算」を行って、その行為が意味があるか、また採算がとれるのかを考えた上で実行に移すのです。視点人物の女の子「あたし」は、最初はルーファスのことを単に感心したり尊敬したりしているのですが、次第にルーファスに影響を受けて、歯みがきを入れるチューブを競り落としたり、チューブに歯みがきを入れる機械や機械のある工場を探したり、その機械を動かせるヘクターさんを見つけたりとどんどん行動していきます。ヘクターさんは失業中だったのですが、ルーファスから話を聞き、銀行からお金を借りてル
ーファスの事業に投資し、ルーファスに雇われるようになります。このようにめぐっていく話で、読者は経済学の基礎を学ぶことができるのです。
この本は私にとってはずいぶん昔に読んだ本で、今回読み直したのにはわけがありました。昨今、AIあるいは生成AIに仕事が奪われるという話をよく聞くので、このような経済の仕組みを書いた児童文学は、古いと感じるのかなと思い、読んでみたのでした。しかし、その結果は、全然古く思いませんでした。理由は、特定の仕事を描いたものではなく、経済が回っていく全体を描いているからであり、これからも続いていく話だからでしょう。今改めて読んでも面白い本だと思います。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)
