SDGs de はぐくむコラム

リハビリで体験した自立歩行までの道

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伊藤研究室には椅子がありません。厳密には「座って仕事をする椅子がない」と言うことです。ゼミや打ち合わせ,食事の時以外は立っています。なぜこんなことを?と思われる方が多いと思いますが、50を過ぎた頃から体力の低下を感じ始めたことがきっかけです。椅子の無い生活…。実感できるメリットは、姿勢保持能力が高くなりました。脚(特にふくらはぎ)の筋肉を鍛えることで美脚になりました。「どっこいしょ!」という感覚が無くなりました。デメリットは、凄く疲れて寝るのが早くなりました。

椅子のない伊藤研究室

そして何よりも立っている(立てている)ことの幸せを感じられます。2016年の秋、ある病気を患いました。このとき経験したのが、乳幼児に経験したような身体発達、2回目の身体発達です。入院中の寝たきり生活、それからの車いす、補助器具を使っての歩行、平行棒につかまりながらの歩行と段階を踏みながらのリハビリを行い、自立歩行ができるまでに1ヶ月かかりました。その時に実感したのは、姿勢保持や歩行には筋力と平衡感覚が重要だということです。大学に戻ってからも、立って仕事をしています。「漸進性の原則」「オーバーロードの原則」を実感しています。(来て、見て、新潟県立大学Vol.15より)

乳幼児の運動機能の発達は、「首のすわり」「ねがえり」「ひとりすわり」「はいはい」「つかまり立ち」「ひとり歩き」と進みます。ここで問題です。6つの運動機能の内、大人になるとできなくなることがあります。それは何でしょう?「できなくなる」は語弊がありました。正確には,「乳児のように正しくできなくなる」ということになります。もう一つ「大人になると」と書きましたが、3歳の入園児もできないお子さんが見受けられます。5歳児(年長)クラスになると1/3くらいしかできません。是非、赤ちゃんに戻って6つの運動機能を実際にやってみてください。詳しくはラジオでお話しいたします。

前後しましたが自己紹介をいたします。新潟県立大学で体育関連科目、保育内容科目を担当しています。また、県内専門学校で保育内容科目、新潟大学で「発育発達論」の授業担当をしています。研究分野は身体発育発達学を学究しています。主な研究テーマは「幼児期の肥満」ですが、子どもの運動・スポーツと発育・発達についてお話ししていきます。遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨しています。興味がありましたら「伊藤巨志」をYahooやGoogleで検索して貰えると日本で1人しか出てきませんので分かると思います。

病気を患い、入院中のリハビリ・退院後のトレーニングを行う中で、立って歩行をするのはどんなに大変な事かを実感することができました。乳幼児期の運動発達を1か月かけて経験したことは貴重な財産になっています。先日は新潟県立幼稚園の子ども達と「鬼ごっこ」をして、捕まらないように真剣に逃げ回りました。昔取った杵柄とはよく言ったもので、脳から動きの指令がどんどん降りてきます。後はその指令を処理できるカラダの準備ができているかいないかです。結果は・・・・頑張りました。

BSNラジオ「大杉りさのRcafe」5月11日放送予定

この記事のWRITER

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

1964年、三条市生まれ。日本体育大学大学院修了【体育学修士】、新潟大学大学院博士後期課程修了【博士(教育学)】。子どもの身体発育発達学、運動遊び、健康教育を専門に研究。新潟市寺山公園子育て交流施設「い〜てらす」低学年広場を監修するなど、遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨。現在:人間生活学部子ども学科長。日本体育・スポーツ・健康学会、日本発育発達学会などに所属。
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