「大きくなりたい 強くなりたい」。子どもたちはいつも、そんな望みを心の中に抱いているのではないでしょうか。
親指ほどの大きさで生まれた一寸ぼうしは、12~3歳になっても体は小さく、「ちび ちび」とばかにされていました。都でひと働きしようと一念発起し、お椀の舟で川を上り、大臣のお屋敷で働くことになります。皆にかわいがられ、姫のお供で寺参りをした帰り、襲ってきた鬼たちを針の刀で退治!打ち出の小槌をふるってもらい、立派な若者に変身します。絵本を見ていた子どもたちは、「イケメ~ン!」と目を丸くします。
おなじみの昔話ですが、じっくり読むと、子どもが成長していくときに大切なことが語られているようです。一寸ぼうしは「わたしにできるしごとが なにかあるにちがいない」と考え、「まめまめしく」働き、鬼の口の中に飛び込んでいきます。小さな自分にしかない力を精いっぱい発揮しているのです。
日本画家 秋野不矩(あきのふく)の絵もたいへん美しく、桜の花と姫を描いた場面は、みやびやかで見とれるほどです。
推薦者:田村 梓(新潟市立小学校の学校司書。子どもたちと一緒に、本や昔話を楽しんで、28年目になりました。公共図書館や幼稚園でも、子どもと本をつなぐ活動をしています。)