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白バラはどこに

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舞台は第二次世界大戦下のドイツです。白バラという名の少女の住む小さな町にも、兵士たちが乗ったトラックが来るようになりました。ある日、1台のトラックが目の前に駐まったかと思うと、中から1人の少年が飛び降りてきて逃げ出そうとしました。町長がそれを阻止し、少年はトラックに連れ戻されたのです。気になった白バラはトラックの後をつけ、森の中にお腹をすかせた子どもたちがいる収容所があることを知ります。その日から、白バラはこっそりとその子どもたちにパンや食料を運ぶようになりました。運び続けているうちに、町の状況は変わり、別の国の兵士が来るようになりました。森の中の収容所はなくなり、収容所を探しにきた白バラは兵士に撃たれて亡くなりました。

白バラという名前は、ミュンヘンの大学生のグループが、反ナチスを唱えて作った「白バラ通信」を配付したために、逮捕され処刑された「白バラ抵抗運動」から来ています。この物語自体はフィクションですが、戦時下においても他の子どものためにパンを運び正義を貫こうとした白バラの姿は、白バラ抵抗運動で処刑されたゾフィー・ショルを彷彿とさせます。

この絵本の原書は、イタリアの画家のイーノセンティが長年構想を温めて描いてきた絵をアメリカの編集者が発見して編集し、それにスイスのジャーナリストであるガラーツが文をつけ、スイスの出版社から刊行されたものです。その後アメリカ翻訳版が出版され、日本ではそのアメリカ版をもとに、本書を含め2つの出版社から2つの日本語訳が出されました。たくさんの人々の努力を経て、今この本が日本でも読めるということに、大きな意味を感じています。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部准教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)

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